入管庁が他省庁と合同で立入調査へ|不法就労の摘発強化で企業が確認すべきこと

外国人の不法就労の摘発を強めるため、出入国在留管理庁(入管庁)が他の省庁と合同で事業所への立入調査を行う方針だと報じられました。まず10月にも、国土交通省とともに解体業者を対象に実施する予定とされています。

名前が挙がっているのは解体業ですが、入管庁の統計では、不法就労が認められた外国人は農業や建設の現場で多く見られます。外国人を雇用している企業にとって、「うちは関係ない」とは言い切れない動きです。

この記事は、外国人を雇用している、またはこれから雇用を考えている事業者の方に向けて、報道の内容、入管職員が同行する理由、雇用主が問われる責任、今のうちに確認しておきたいことを整理したものです。

目次

結論:まず押さえておきたい5つのポイント

  • 報道によると、入管庁は所管省庁の立入調査に職員を同行させる形で、不法就労の調査を広げる方針です。
  • 第一弾は国土交通省と解体業者(10月にも)。ヤード(車の解体・保管場)については環境省と協議中とされています。
  • 在留カードの提示を求めることができる職員は法令で決まっており、建設業などを所管する部署の職員は含まれていません。入管職員の同行には、この点を補う意味があると考えられます。
  • 不法就労をさせた事業主は不法就労助長罪の対象です。現行は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金で、令和9年4月1日から5年以下・500万円以下に引き上げられます。
  • 「知らなかった」だけでは処罰を免れません。在留カードの確認など、採用時と雇用中の確認を記録に残すことが大切です。

※本記事は公表情報と報道をもとにした一般的な解説です。個別の事案については、最新の運用を確認したうえでの判断が必要です。

報道された「合同立入調査」の概要

これまでの調査との違い

報道によると、これまで入管庁が不法就労の調査に入るのは、通報などで疑いが分かった場合が中心でした。

新たな方針では、事業を所管する省庁や自治体が定期的に行っている立入調査に、入管庁の職員が同行します。事業上の法令違反の確認と、働いている外国人の在留資格の確認を、同じ機会に行える形になります。

これまでは通報などで疑いが分かった場合に入管庁が調査、これからは所管省庁の立入調査に入管庁の職員が同行する方針。国土交通省と解体業者は10月にも実施予定、環境省とヤードは協議中
報道で伝えられている方針を整理したもの

なぜ解体業とヤードなのか

建物の解体業や、自動車を解体・保管するヤードについては、不法就労の温床になっているとの指摘があります。報道では、解体業は国土交通省、ヤードは環境省などが所管し、それぞれ自治体と連携して立入調査を行っていると伝えられています。

政府が令和8年1月23日に決定した「外国人の受入れ・秩序ある共生のための総合的対応策」でも、不適正ヤードが不法就労の温床になっているとの指摘に触れ、入管庁と関係省庁の情報共有や、関係機関の連携を強めることが掲げられています。

なお、合同調査の具体的な対象や実施時期について、入管庁の正式な発表は2026年9月13日時点で確認できていません。今後の公表によって内容が変わる可能性があります。

なぜ入管職員の同行が必要なのか

中長期在留者は在留カードを常に携帯し、決められた職員から求められたときは提示しなければなりません(入管法第23条)。

提示を求めることができる職員は、入管法と法務省令で次のように定められています。

提示を求めることができる職員根拠
入国審査官・入国警備官・警察官・海上保安官入管法第23条第3項
税関職員・公安調査官・麻薬取締官入管法施行規則第26条
市町村で外国人住民の住民票の事務を行う職員入管法施行規則第26条
公共職業安定所(ハローワーク)の職員入管法施行規則第26条

この中に、建設業や廃棄物処理などを所管する部署の職員は入っていません。そのため、所管省庁や自治体の職員だけでは、働いている外国人の在留資格をその場で確かめることができません。入管職員の同行には、この点を補う狙いがあると考えられます。

データで見る不法就労の現状

入管庁の公表資料によると、令和7年に退去強制手続等を執った外国人は18,442人で、そのうち不法就労が認められた人は13,435人(72.9%)でした。

令和7年に不法就労が認められた外国人13,435人の職種。農業従事者5,227人、建設作業者4,011人、その他の職種4,197人
出典:出入国在留管理庁「令和7年における入管法違反事件について」
項目令和7年
退去強制手続等を執った外国人18,442人
うち不法就労が認められた人13,435人(72.9%)
職種で最も多い農業従事者 5,227人
職種で2番目に多い建設作業者 4,011人
国籍・地域で最も多いベトナム 5,872人(43.7%)
就労場所で最も多い茨城県 3,518人

出典:出入国在留管理庁「令和7年における入管法違反事件について」

同じ資料の摘発事例には、令和7年7月、埼玉県内の解体業者で複数の不法滞在の外国人が働いていることを確認し、関係機関と合同で摘発した例が紹介されています。解体業の現場での合同摘発は、すでに実際に行われています。

雇用主が問われる責任

不法就労助長罪

事業活動に関して外国人に不法就労をさせた人、不法就労をさせるために自分の支配下に置いた人、それを業としてあっせんした人は、不法就労助長罪の対象になります(入管法第73条の2)。

時期法定刑
現在(2026年9月時点)3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科あり)
令和9年4月1日から5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科あり)

従業員が会社の業務に関して違反した場合は、行為者だけでなく会社にも罰金刑が科される両罰規定があります(入管法第76条の2)。

「知らなかった」では済まない

その仕事が在留資格の範囲外であることや、資格外活動の許可を受けていないことなどを知らなかったとしても、それだけで処罰を免れることはできません。処罰されないのは、知らなかったことに過失がない場合に限られます(入管法第73条の2第2項)。

在留カードを確認していなかった、在留資格の内容を調べていなかったといった事情があると、「知らなかった」という言い分は通りにくくなります。

外国人雇用状況の届出

事業主には、外国人を雇い入れたときと離職したときに、氏名や在留資格などを在留カード等で確認し、厚生労働大臣に届け出る義務があります。先の総合的対応策では、未届や虚偽の届出には30万円以下の罰金があることに触れたうえで、届出義務の徹底や、在留カード等読取アプリの使用確認を厳しくすることが掲げられています。

働く外国人本人への影響

在留カードを携帯していなかった場合は20万円以下の罰金、求められたのに提示を拒んだ場合は1年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金の対象です(入管法第75条の2・第75条の3)。「カードを家に置いてきた」ということがないよう、日ごろから従業員に伝えておくことも大切です。

企業が今から備えておきたい3つのこと

雇用主の確認ポイント。在留カードの原本、在留資格と就労制限の有無、在留期間の満了日、資格外活動許可と届出

1. 在留カードの原本と在留資格を確認し、記録を残す

採用時は在留カードの原本を確認し、在留資格、就労制限の有無、在留期間の満了日を控えます。入管庁が無料で公開している「在留カード等読取アプリケーション」を使うと、カードが偽造・変造されたものでないかを確認できます。

令和8年6月14日以降に交付された新しい様式の在留カードは、券面の記載項目が一部変わっています。詳しくは新様式の在留カードで確認できる項目と注意点で解説しています。

2. 仕事の内容が在留資格の範囲に入っているか確かめる

在留カードが本物で期限内でも、任せている仕事が在留資格の範囲外であれば不法就労になります。人手が足りないときに別の作業を手伝わせる、別の現場へ回すといった運用には特に注意が必要です。留学生や家族滞在の方をアルバイトで雇う場合は、資格外活動許可の有無と、その範囲も確認します。

3. 在留期限の管理を仕組みにする

在留期間の満了日を過ぎると、原則として働き続けることはできません。ただし、満了日までに更新などの申請をしていれば、一定の期間は引き続き在留できる「特例期間」があります。申請中かどうかを会社として把握しておくことが大切です。詳しくは在留期限が過ぎても働ける「特例期間」の解説をご覧ください。

よくある質問

Q. 解体業以外の業種も、合同立入調査の対象になりますか?

報道で具体的に挙がっているのは、国土交通省と行う解体業者への調査と、環境省と協議中のヤードです。そのほかの業種に広がるかどうかは、2026年9月13日時点で公表されていません。ただし、不法就労は業種を問わず摘発の対象です。

Q. 立入調査に備えて、会社は何を用意しておけばよいですか?

在留カードの携帯と提示の義務を負うのは、外国人本人です。調査の進め方は所管省庁や事案によって異なるため、会社としては、在留カードを確認した記録や雇用契約書、外国人雇用状況の届出の控えなどを、すぐに出せるよう整理しておくと安心です。

Q. 派遣や請負で来ている外国人が不法就労だった場合、受け入れ先も責任を問われますか?

不法就労助長罪は、事業活動に関して外国人に不法就労をさせた人などが対象です。派遣元・派遣先、元請・下請のどこが責任を問われるかは、指揮命令の実態など個別の事情によって判断されます。受け入れる側でも、在留カードの確認状況を派遣元や下請先に確かめておくことをおすすめします。

Q. 従業員の在留期限が切れていることに気づいたら、どうすればよいですか?

まず、満了日までに更新などの申請をしていたかを確認してください。申請していた場合は、特例期間に当たる可能性があります。申請していなかった場合は、そのまま働かせ続けると不法就労助長罪に問われるおそれがあります。できるだけ早く専門家にご相談ください。

Q. 在留カード等読取アプリは、どこで入手できますか?

出入国在留管理庁が無料で公開しています。入管庁のウェブサイトで、パソコン版とスマートフォン版の案内を確認できます。

まとめ

今回の報道は、所管省庁の立入調査に入管職員が加わることで、不法就労の確認が、これまでより身近な行政の場で行われるようになることを示しています。

第一弾は解体業ですが、不法就労が認められた人の職種は農業や建設など幅広く、どの業種でも雇用主の確認責任は変わりません。令和9年4月には罰則も重くなります。

調査が来てから慌てるのではなく、在留カードの確認、仕事内容と在留資格の照合、在留期限の管理を、今のうちに社内の手順として整えておきましょう。

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参考にした公的情報・報道

※本記事は2026年9月13日時点の公表情報と報道に基づいています。制度や運用は変わることがあり、個別案件の判断に代わるものではありません。

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