出入国在留管理庁は、在留資格の変更許可・在留期間の更新許可・永住許可などにかかる手数料を大幅に引き上げる政令案を公表しました。在留期間の更新は現在の一律6,000円(窓口)から、在留期間に応じて最大7万5,000円に。永住許可は1万円から20万円になります。
施行予定日は令和8年(2026年)10月1日です。しかも、適用の分かれ目は「許可された日」ではなく「申請した日」とされています。9月30日までに申請が受け付けられていれば、許可が10月以降になっても現在の手数料で済む、という仕組みです。
この記事は、外国人材を受け入れている企業のご担当者と、在留期間の更新や永住許可を控えている外国人ご本人に向けて、改正の中身と「9月中に動くべきか」の判断材料を整理したものです。改正法と政令案の原文にあたって確認した内容をお伝えします。
結論:まず押さえておきたい5つのポイント
- 法律上の上限額はすでに引き上げ済み。令和8年6月5日公布の改正入管法(令和8年法律第32号)で、変更許可・更新許可は10万円、永住許可は30万円が上限になりました。
- 実際に納める額は政令で決まる。令和8年7月3日に公表された政令案では、更新・変更が在留期間に応じて1万円〜7万5,000円、永住許可が20万円とされています。
- 施行予定日は令和8年10月1日。ただし本記事の作成時点では、この政令はまだ「案」の段階です。
- 基準は申請日。改正法の附則により、施行日前にされた申請に対する許可の手数料は、これまでどおりの額になります。
- オンライン申請の方が安い。政令案では、窓口申請とオンライン申請とで3,000円〜1万円の差が設けられています。
以下は制度の一般的な解説です。実際にどの額が適用されるかは、申請の種別・時期・決定される在留期間によって変わります。個別の判断は最新の運用をご確認ください。
制度の概要 ― 「法律の上限」と「政令の実額」は別
今回の改定は、二段構えになっています。ここを分けて理解しておくと、報道の見出しに振り回されずに済みます。
1. 改正入管法が「上限額」を引き上げた(成立済み)
令和8年5月29日に成立し、6月5日に公布された改正法(令和8年法律第32号)は、入管法上の手数料の上限額を次のとおり引き上げました。
| 許可の種類 | 改正前の上限 | 改正後の上限 |
|---|---|---|
| 在留資格の変更許可 | 1万円 | 10万円 |
| 在留期間の更新許可 | 1万円 | 10万円 |
| 永住許可 | 1万円 | 30万円 |
注意していただきたいのは、これは「上限」であって、実際に窓口で納める額ではないという点です。「更新が10万円になる」という説明を見かけますが、正確ではありません。
2. 政令が「実際の額」を定める(案の段階)
具体的な額は、これまでどおり政令に委任されています。物価の変動などに応じて機動的に決められるようにするためです。その政令案が令和8年7月3日に公表され、8月2日までパブリックコメントにかけられました。
あわせて、改正法は手数料の額を決める際に考慮する要素も明確にしました。審査の実費だけでなく、外国人の出入国および在留の公正な管理に要する費用と、諸外国における同種の手数料の額を勘案するとされています。
改定後の在留許可手数料(政令案)
在留資格の変更許可・在留期間の更新許可
現在は、決定される在留期間にかかわらず窓口6,000円・オンライン5,500円の一律です。政令案では、決定される在留期間が長いほど高くなる段階制に変わります。
| 決定される在留期間 | 窓口 | オンライン |
|---|---|---|
| 現行(期間を問わず) | 6,000円 | 5,500円 |
| 3月以下 | 10,000円 | |
| 3月超6月以下 | 18,000円 | 15,000円 |
| 6月超1年未満 | 25,000円 | 21,000円 |
| 1年 | 33,000円 | 27,000円 |
| 1年超3年未満 | 48,000円 | 42,000円 |
| 3年以上5年未満 | 64,000円 | 56,000円 |
| 5年以上 | 75,000円 | 65,000円 |

たとえば在留期間3年で更新許可を受ける場合、窓口なら6,000円から4万8,000円へ。1年の場合でも3万3,000円です。
永住許可は1万円から20万円へ
| 手続 | 現行 | 改定後(案) |
|---|---|---|
| 永住許可 | 10,000円 | 200,000円 |
永住許可の20万円について、入管庁は積算の考え方も示しています。審査の実費が約2万円、これに「永住許可を受けた後の在留期間が平均13.5年程度である」ことを踏まえた応益的な要素として約18万円を加えた、という説明です。
額が変わらない手続もあります
今回の政令案で額が変わるのは、在留資格の変更許可・在留期間の更新許可・永住許可の3つです。新旧対照条文を確認したところ、次の手続の額は現行のまま据え置かれています。
| 手続 | 額(現行・改定後とも同額) |
|---|---|
| 再入国許可(数次を除く) | 4,000円/オンライン3,500円 |
| 数次再入国許可 | 7,000円/オンライン6,500円 |
| 就労資格証明書の交付 | 2,000円/オンライン1,600円 |
| 在留カードの交付 | 1,900円 |
| 難民旅行証明書の交付 | 4,800円 |
実務への影響 ― 分かれ目は「9月30日までに申請したか」
ここが最も重要なところです。改正法の附則第5条は、施行日前にされた申請に対する許可の手数料について、なお従前の例によると定めています。
これまでどおりの手数料になるもの
- 施行日前にされた申請に対する在留資格の変更許可
- 施行日前にされた申請に対する在留期間の更新許可
- 施行日前にされた申請に対する永住許可
- 施行日前にされた申請に対する再入国許可およびその有効期間の延長許可
つまり、基準は許可が下りた日ではなく、申請が受け付けられた日です。9月30日までに申請しておけば、審査が長引いて許可が11月や12月になったとしても、納めるのは現在の額ということになります。
新しい手数料になるもの
施行日以後にされた申請です。永住許可であれば、10月1日に申請した方は20万円、9月30日に申請した方は1万円という差が生じる計算になります。
とくに永住許可申請を検討しておられる方にとっては、差が19万円と大きくなります。もっとも、永住許可は要件を満たしていなければ不許可になるだけで、急いで出せばよいというものではありません。永住許可については、収入要件などを厳格化するガイドラインの改定案も別途公表されていますので、あわせてご確認ください。
在留許可手数料の減額・免除の対象
上限額の引上げにともない、減額と免除の規定も置かれました。政令案では次のとおりです。
減額(人道上の配慮)
生活保護法に規定する要保護者に準ずる程度に生活に困窮していると認められる方で、難民の認定または補完的保護対象者の認定を受けている方など、人道上の配慮をする必要がある方が対象です。3月を超える在留期間を決定される変更・更新は1万円まで、永住許可は2万円まで減額できるとされています。詳細はガイドラインに記載される予定です。
免除
- 外交または公用の在留資格への変更許可を受ける方
- 公用の在留資格で在留する方が在留期間の更新許可を受ける場合
- これらに準ずるものとして法務省令で定める方
企業が今から備えておきたい3つのこと
1. 12月末までに期限を迎える方を洗い出す
在留期間の満了日は、更新申請の受付が満了日のおおむね3か月前から可能です。10月〜12月に満了を迎える方であれば、9月中に申請できる可能性があります。まず社内の在留期限一覧を確認し、前倒しできる方がいないかを見てください。
ただし、前倒しすると次回の満了日が早まるわけではありません。更新後の在留期間は、現在の満了日の翌日から起算されるのが原則です。
2. 手数料を誰が負担するのかを決めておく
在留期間更新の手数料は、法律上は申請を行う外国人本人が納めるものです。しかし実務では、受入企業が負担している例も少なくありません。数千円であれば問題にならなかった負担が、数万円単位になります。
社内規程や雇用契約書、特定技能の場合は支援計画などで、費用負担の取扱いがどうなっているかを確認しておくことをおすすめします。来年度の予算にも影響します。
3. オンライン申請の利用を検討する
政令案では、オンライン申請の方が3,000円〜1万円安く設定されています。入管庁が「オンライン申請の利用拡大」を明確に政策的要素として織り込んだためです。在留申請のオンライン手続には利用者情報の登録が必要ですので、まだの場合は早めに準備を進めておくとよいでしょう。
よくある質問
Q. 在留期間の更新は本当に10万円になるのですか?
いいえ。10万円は法律で定められた上限額です。政令案で示されている実際の額は、決定される在留期間に応じて1万円〜7万5,000円です。
Q. 9月30日に申請すれば、許可が10月以降でも今の手数料ですか?
改正法の附則によれば、そのとおりです。施行日前にされた申請に対する許可の手数料は、なお従前の例によるとされています。ただし、申請が受理されていることが前提です。書類の不備で受け付けられなかった場合は「申請した」ことになりませんので、余裕をもってご準備ください。
Q. 在留資格認定証明書の交付申請も値上げされますか?
在留資格認定証明書の交付申請には、もともと手数料がかかりません。今回の政令案で額が変わるのも、変更許可・更新許可・永住許可の3つに限られています。
Q. 特定技能や育成就労の手続にも影響しますか?
在留資格「特定技能」への変更許可や在留期間の更新許可も、当然に対象です。特定技能1号は在留期間が1年・6か月・4か月のいずれかで決定されるため、更新の頻度が高く、影響を受けやすい在留資格といえます。育成就労制度への移行も控えていますので、あわせて計画を立てておくことをおすすめします。
Q. 政令はもう決まったのですか?
本記事の作成時点では、まだ「案」の段階です。パブリックコメントは令和8年8月2日で終了していますが、政令の公布は確認できていません。最終的な額や施行日が案のとおりになるとは限りませんので、公布された内容を必ずご確認ください。
まとめ
在留許可の手数料は、令和8年10月1日から大きく変わる見込みです。とくに在留期間が長く決定される方ほど負担が増え、永住許可では20倍の差が生じます。
一方で、改正法は「施行日前にされた申請」を旧額のままとしています。9月中に申請できるものがあるかどうかを、いま一度確認しておく価値は十分にあります。数十人規模で外国人材を受け入れている企業であれば、差額は決して小さくありません。
ただし、手数料を惜しんで準備不足のまま申請することは避けてください。不許可になれば、結局やり直しになります。
在留資格の申請についてご相談ください
たかやま行政書士事務所では、外国人材の受入れに関する各種手続を承っております。
- 在留期間更新許可申請・在留資格変更許可申請
- 永住許可申請
- 在留資格認定証明書交付申請
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在留期限の管理や、今回のような制度改正への対応にお困りの際は、お気軽にお問い合わせください。
参考にした公的情報
- 出入国在留管理庁「令和8年入管法等改正法について」https://www.moj.go.jp/isa/01_00643.html
- 出入国在留管理庁「出入国管理及び難民認定法施行令及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法施行令の一部を改正する政令案」等に係る意見募集について(e-Govパブリック・コメント、案件番号315000136)
- 出入国管理及び難民認定法及び出入国管理及び難民認定法第二条第五号ロの旅券を所持する外国人の上陸申請の特例に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第32号)
※本記事は2026年8月18日時点の公表情報に基づいています。改正政令は本記事作成時点で案の段階であり、公布された内容が異なる可能性があります。制度の一般的な解説であり、個別案件の判断に代わるものではありません。
