永住許可のガイドライン改定案 ― 収入要件が「日本人世帯超え」に厳格化

出入国在留管理庁は2026年8月4日、外国人の永住許可に関するガイドラインの改定案を公表しました。永住許可について「特に慎重な審査を行う必要がある」と、初めて明記しています。あわせて、独立生計要件や国益要件も大幅に厳格化されました。特定技能外国人をはじめ、将来的に永住を目指す方や、その雇用企業様にとって影響の大きい内容です。本記事では、改定案の主なポイントと今後のスケジュールを解説します。

目次

何が変わるのか

永住許可の要件は、入管法第22条第2項で次の3点と定められています。素行が善良であること。独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。そして、その者の永住が日本国の利益に合すると認められることです。これら法律上の要件自体に、変更はありません。ただし、今回の改定案では、審査の運用基準が大きく引き上げられています。

永住許可 ガイドライン改定について相談する行政書士と外国人クライアント

独立生計要件 ― 収入は「日本人世帯超え」へ

現行のガイドラインでは、「日常生活で公共の負担にならず、将来安定した生活が見込まれること」とされています。改定案では、これを「日本人と同等水準以上の経済条件」へと引き上げます。具体的には、世帯人数に応じた「日本人世帯の平均収入」を、継続して上回る収入が必要になります。これまでの目安は、単身者で年収300万円程度でした。改定後は、実質的にこれより高いハードルとなる見込みです。

年金要件を新たに追加

将来受け取る年金額についても、新たな基準が加わります。日本人世帯を上回る収入で「30年間厚生年金に加入していた水準」の受給見込額に達しているか。この点が、新たな審査のポイントとなります。

国益要件も明確化

国益要件については、新しい考え方が明記されます。「積極的かつ具体的に国に利益をもたらす必要がある」というものです。あわせて、一定水準の日本語能力も考慮要素に加わります。日本の制度・ルールへの理解も、同様に考慮されます。義務教育期間の子がいる場合は、その子の就学状況も審査の対象です。

あわせて公表された「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン案」

2026年8月4日には、もう一つの案が同時に公表されています。「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン案」です。こちらも意見募集の対象で、期間は許可のガイドライン改定案と同じく2026年9月3日までです。永住許可を「取る」ときの基準だけでなく、永住許可を得た「あと」の話でもあるため、すでに永住者として在留されている方にも関わります。

取消しの対象となる3つの事由

もともと「永住者」の在留資格の取消しは、永住許可の申請に虚偽があった場合などに限られていました。令和6年の入管法改正で、これに次の3つが加わっています(入管法第22条の4第1項第8号・第9号)。

  • 入管法に規定する義務を遵守しないこと
  • 故意に公租公課の支払をしないこと
  • 特定の刑罰法令違反により拘禁刑に処せられたこと

ガイドライン案は、この3つについて解釈の考え方と、該当すると想定される具体的な事例を示すものです。国会の附帯決議で、ガイドラインの策定と周知が求められていたことが背景にあります。

該当しても、原則は「定住者」などへの職権変更

ここは誤解の生じやすいところです。取消事由に該当したからといって、直ちに在留資格を失って出国することにはなりません。入管法第22条の6により、「引き続き本邦に在留することが適当でないと認める場合」を除いて、法務大臣が職権で「永住者」以外の在留資格への変更を許可することとされています。ガイドライン案は、この職権変更について「ほとんどの場合は、『定住者』の在留資格への変更を許可することを想定しています」と述べています。さらに、職権変更後に永住許可の要件を満たせば、再度永住許可を受けることも可能とされています。

「公租公課」に何が含まれ、何が含まれないか

実務で最も問い合わせが多くなりそうなのが、税金と保険料の滞納です。ガイドライン案では、「公租」は所得税・住民税・法人税・固定資産税などの租税全般、「公課」は公的医療保険(国民健康保険、健康保険等)や公的年金(国民年金、厚生年金保険)の保険料などを指すとされています。一方で、手数料・利用料や、交通違反による罰金・反則金は公租公課に含まれないと明記されています。

また、「故意に」という言葉が置かれた趣旨は、単に支払っていない事実があるだけでなく、支払わないことが悪質といえる場合に限る点にあると説明されています。滞納の額・期間・回数、滞納に至った経緯、その後の生活や事業の状況などを総合考慮し、支払意思がないことが明白と認められる場合が該当するという整理です。滞納額について一律の基準を定めるものではない、とも書かれています。

該当しないと想定される事例

ガイドライン案は、該当しないと想定される事例も挙げています。企業様・外国人材の方にとっては、こちらのほうが重要かもしれません。

  • 病気、災害、失業などのやむを得ない事情により支払ができない場合(事業不振、感染症の流行や災害による収入変動、DV被害による生活困難、ハラスメントを原因とする離職などが例示されています)
  • 催告等に応じて支払う意思を示しており、分納や猶予措置を受けている場合
  • 生活保護に準じた措置を受けている場合
  • 給与から公租公課が控除されているにもかかわらず、所属企業がその公租公課を支払っていない場合

最後の一つは、企業様にとって見過ごせない項目です。給与から天引きしている社会保険料や住民税を会社が納めていない場合、そのこと自体で従業員である永住者の責任が問われるわけではありません。とはいえ、納付の遅れは従業員の生活と在留の双方に不安を残します。納付状況の確認は、外国人材を雇用するうえでの基本的な労務管理の一部とお考えください。

在留カードの携帯・更新も対象。ただし一度の失念で取消しにはならない

「入管法に規定する義務」には、在留カードの携帯義務・提示義務(入管法第23条)や、有効期間の更新・紛失時の再交付の申請義務(第19条の11、第19条の12)が含まれます。ガイドライン案は、更新を失念した場合や不注意で携帯しなかった場合も取消事由には該当するとしたうえで、「その一度の義務の不履行だけをもって在留資格を取り消すことは想定していません」と明記しています。取消しが相当となるのは、繰り返しの指導にもかかわらず今後も義務を履行する意思がないと認められる場合などです。

国・自治体からの「通報」は義務ではない

令和6年の改正では、国や地方公共団体の職員が取消事由に該当すると思料する外国人を知ったときに、入管庁へ通報できる規定も整備されました(入管法第62条の2)。ガイドライン案は、この通報は義務ではなく任意の判断であること、通報があったことをもって直ちに取消事由に該当すると判断するものではないこと、入管庁が事実の調査や本人からの意見聴取を行ったうえで法務大臣が取消しの要否を決定することを、あらためて示しています。

なお、家族関係や人道上の配慮の必要性がある場合には、取消相当と判断したときでも取り消さず職権変更にとどめる場合があり得る、とも記載されています。

いずれもまだ案の段階です。意見募集の結果を踏まえて内容が変わる可能性があります。永住許可をお持ちの方、これから永住を目指す方、外国人材を雇用されている企業様で、ご自身のケースへの影響が気になる方は、たかやま行政書士事務所までご相談ください。

特定技能外国人や雇用企業様への影響

特定技能から永住を目指すケースなど、多くの外国人材にとって影響があります。収入要件のハードルが上がることが予想されるためです。特に扶養家族が多い世帯では、これまでより高い年収水準が必要になるかもしれません。なお、具体的な基準額は、今後の正式なガイドライン公表を待つ必要があります。企業様にとっても、外国人材の待遇改善は重要な課題です。キャリアパスの整備も、将来の永住支援を見据えるうえで欠かせません。

今後のスケジュール

今回の改定案は、まずパブリックコメント(意見公募)にかけられます。期間は2026年8月4日から9月3日までです。そのうえで、10月に正式な改定が行われる方針です。適用時期は、要件によって異なります。収入要件は2026年10月に施行されます。適用は2026年4月以降の申請分からとなる方針です。年金要件や日本語能力要件など、その他の項目は2027年4月からの適用が見込まれています。なお、この2026年4月以降の申請分への適用は、収入要件と「公共の負担とならないこと」の2項目に限られ、かつ改定日の時点でまだ審査中である案件が対象とされています。

企業様・外国人材の方へ

現時点では、まだ改定案の段階です。具体的な基準額なども、今後の正式発表を待つ必要があります。ただし、永住を目指す方にとっては、早めの準備が重要です。当事務所の永住権ビザの取得要件のページもあわせてご覧ください。ご自身のケースへの影響が気になる方はいらっしゃいませんか。特定技能外国人の永住支援を検討中の企業様も、ぜひたかやま行政書士事務所までご相談ください。

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出典: 出入国在留管理庁「『永住者』の適正化に係るパブリック・コメントの実施について」/e-Gov「永住許可に関するガイドライン改定案に係る意見募集について」(案件番号315000140)/e-Gov「永住者の在留資格の取消しに関するガイドライン案に係る意見募集について」(案件番号315000141)/時事通信(2026年8月4日配信)

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