特定技能の定期報告(定期届出)は、対象者と対象期間を決め、勤怠・給与・支援の記録を集計してから、参考様式第3-6号と別紙へ転記すると進めやすくなります。特に、本体の「月平均」と別紙1の「年間合計」を混同しないことが大切です。
この記事では、特定技能1号を受け入れる企業の担当者向けに、現行様式の書き方と計算例を解説します。2号への移行がある場合の注意点も取り上げます。制度・資料の確認日は2026年9月22日です。例示する人物・金額・日程は、説明用の架空例です。
提出期限や必要書類の全体像を先に確認したい方は、特定技能1号の定期報告の概要|提出時期・必要書類・企業の準備をご覧ください。
1.最新様式と集計資料をそろえる
入管庁の特定技能関係の申請・届出様式一覧から、令和8年4月1日以降の提出に使う様式を確認します。古い四半期ごとの様式を流用せず、定期届出作成要領を横に置いて記入しましょう。
| 書類 | 記入する内容 |
|---|---|
| 第3-6号(本体) | 企業情報、対象人数、労働条件等、支援の実施状況、作成者 |
| 第3-6号・別紙1 | 外国人ごとの身分事項、活動日数、年間報酬、支援実施状況 |
| 第3-6号・別紙2 | 所定の場合に必要な、所属機関・登録支援機関の署名欄 |
手元には、在留資格と許可日の履歴、入退社記録、出勤簿、賃金台帳、給与明細、支払記録、支援記録、委託先と委託期間の一覧をそろえます。数字を先に埋めるのではなく、どの資料から集計したかを残しておくと、訂正や問い合わせに対応できます。
2.第3-6号の対象期間・企業情報・人数を書く
対象期間と企業情報の記入例
2026年度分を2027年4〜5月に提出する例では、届出対象期間は「2026年4月1日〜2027年3月31日」です。提出日から直近12か月を逆算するものではありません。
法人は法人番号、法人の正式名称、本店所在地、受入れ分野を確認します。「株式会社」などを省略せず、店舗名だけを書かないようにします。複数の店舗・工場があっても、本体は本社が取りまとめて1部提出します。一方、別紙1は事業所ごとに作成します。
対象人数は3月末の在籍人数とは限らない
対象年度に1日でも受入れ期間が含まれる方を確認し、年度途中の退職者も数えます。同じ年度に退職して再雇用した同一人物は1人です。受入れ開始は原則として特定技能での上陸許可日・在留資格変更許可日を基準にし、実際の初出勤日だけで判断しません。未入国で在留資格認定証明書の交付を受けただけの方は含めません。
| 受入れ状況の例 | 対象人数への反映 |
|---|---|
| Aさん:年度を通じて1号で受入れ | 1号に1人 |
| Bさん:年度途中に受入れ、同年度中に退職 | 1号に1人 |
| Cさん:年度途中に1号から2号へ変更 | 2号に1人。1号には重複計上しない |
| 合計 | 1号2人・2号1人 |
Cさんについては、人数を2号に計上しても、1号だった期間の支援報告がなくなるわけではありません。労働条件等の欄は、2号への変更許可を受けた月以降(月途中の許可なら翌月以降)の状況を2号欄へ記載し、1号だった期間の支援実施状況は別紙1で報告します。根拠は作成要領の「3」「4」「8」です。
3.労働条件等の月平均を計算する
人数で単純平均せず、対象となる在籍月数で割る
定期届出Q&AのQ18では、対象者全員の年間の対象数値を合計し、全員の在籍月数の合計で割る方法が示されています。1号と2号は分けて計算します。次は、全員が1号で、表の期間がすべて算定対象になると仮定した例です。
| 架空の従業員 | 月額・対象月数 | 対象給与の合計 |
|---|---|---|
| Aさん | 26万円 × 12か月 | 312万円 |
| Bさん | 22万円 × 12か月 | 264万円 |
| Cさん | 22万円 × 6か月 | 132万円 |
| 合計 | 30か月 | 708万円 |
記入する月平均額は、708万円 ÷ 30か月 = 236,000円です。3人の月額だけを平均した金額や、708万円を12か月だけで割った金額にはしません。この例は給与が一定の場合ですが、実際は月ごとの支給記録を集計します。
受入れ開始・終了月、休業月の扱い
作成要領では、月途中に受入れを開始・終了した月を平均計算に含めません。一方、休業した月は、丸1か月の休業でも計算対象に含めます。実労働日数・時間には、実際に働かなかった日・時間を入れません。
同じ会社で別の在留資格から特定技能へ変更した場合、給与の平均算定は、変更許可を受けた月の翌月に支給された給与から対象にします(Q&A・Q17)。受入れ日、勤務月、給与支払月を分けて照合してください。
該当する区分の対象者全員について、対象期間内の雇用期間が1か月未満の場合は、作成要領に従いその1号・2号欄の(1)〜(6)を0とし、備考欄に「1か月未満」と記載します。人数まで0人にするわけではありません。1か月未満の方とそれ以外の方が混在するときは、区分全体を一律に0とせず、対象者ごとの算定期間を確認しましょう。
給与・手当・控除を正しい欄に分ける
| 本体の項目 | 記入のポイント |
|---|---|
| (1)実労働日数 | 有給休暇で全く働いていない日は除く。短時間でも働いた日や休日労働日は含む |
| (2)(3)労働時間 | 所定内と超過実労働時間を分ける。休憩・不就労時間を混ぜない |
| (4)きまって支給する現金給与額 | 控除前の金額。超過労働給与額を含めて集計する |
| (4)の内訳①〜④ | 超過労働給与額・通勤手当・精皆勤手当・家族手当を所定欄へ記入 |
| (6)控除額 | 食費、居住費(水道・光熱費を含む)、税・社会保険料、その他に分ける |
超過労働給与額は、時間外手当の割増部分だけを書くものではありません。たとえば1.25倍で支給する時間外手当なら、その全額を確認します。所定の内訳欄の手当名を書き換えず、該当欄にない定例手当は(4)の合計へ含めます。(1)〜(6)は小数点第1位を四捨五入し、整数で記入します。
賞与は「支給された人」の人数で平均する
(5)の賞与・期末手当等特別給与額は、対象期間中の特別給与額を合計し、支給された特定技能外国人の人数で割ります。月平均にするため12で割る欄ではありません。
架空例として、1号のAさんに年間40万円、Bさんに年間30万円を支給し、Cさんには支給がなければ、70万円 ÷ 2人 = 350,000円です。特別給与には賞与以外に該当する支給もあるため、作成要領の(5)に照らして分類します。
昇給率は「100%」を基準に書かない
(7)は、届出書を作成する年度の4月1日時点で、同じ所属機関・同じ在留資格で継続して2年以上受け入れている方がいる場合に記入します。該当者がいなければ空欄です。1号と2号の期間を単純に足して判定しません。
比較する賃金は(4)から内訳①〜④を差し引いた額です。架空例として、対象者1人の比較対象となる月額平均が、前々年度22万円、前年度23万1,000円なら、(231,000 − 220,000)÷ 220,000 × 100 = 5.0%です。105%とは書きません。該当者の昇給がなければ0%、複数人なら作成要領の方法で対象者の賃金をまとめ、1号・2号別に算出します。小数点第2位を四捨五入して小数点第1位まで記入します。
4.別紙1は外国人ごとの年間実績を書く
身分事項・活動日数・報酬を元資料と照合する
事業所ごとに、氏名、国籍・地域、生年月日、性別、在留カード番号、受入れ分野などを確認して記入します。別紙1の活動日数と報酬は、本体の月平均をコピーする欄ではありません。
「活動日数の総数(年間)」は、実際の就労日数を基にします。有給・無給を問わず働いていない休暇日は除きますが、支援計画に基づく生活オリエンテーションなどの支援、職務命令による出張・研修は含めます(Q&A・Q21)。本体の実労働日数と同じ集計だと思い込まないようにしましょう。
架空例として、通常の就労220日、就労日と重ならない職務命令による研修2日、支援計画に基づく生活オリエンテーション1日なら、活動日数は223日です。別に有給休暇10日があっても足しません。同じ日を就労と研修で二重に数えないよう確認します。
「報酬の支給総額(年間)」は、対象期間中に支払われた、基本賃金と諸手当等を合わせた控除前の総額です。振込後の手取り額を書かないでください。毎月20日締め・翌月10日払いなら、対象年度の4月10日から翌年3月10日までに支払われた分を集計します。活動日数の対象と給与の勤務対象月が一致しなくても差し支えありません(Q&A・Q23)。
「報酬の支払方法」は実際の方法を選択します。預貯金口座への振込み以外の支払方法がある場合は、対象者について報酬支払証明書(参考様式第5-7号)が必要です。
支援欄は実施記録を確かめて選択する
支援の形態、支援担当者名・電話番号、随時届出(報告)の提出状況など、様式の欄に沿って記入します。全部委託の場合は登録支援機関と本人情報・支援期間を突き合わせます。「問題なし」と一律に扱う前に、支援の実施困難や特異事案に関する届出・報告の要否と提出記録を確認してください。
年度途中に委託先を変更した場合は、旧委託先と新委託先それぞれの期間の支援実績を集めます。自社支援の期間も合わせ、年度全体を報告できるようにします。本体の「5 支援の実施状況」は、1人でも全部委託の方がいれば「支援の全部委託あり」を選択し、一部委託だけなら「自社支援のみ」を選択します。
5.担当者・署名・別紙2を確認する
担当者欄には、届出内容の問い合わせに対応できる方の氏名と電話番号を書きます。所属機関の作成者欄は、実際に作成した所属機関の役職員が署名します。支援を委託していても、この欄を登録支援機関の担当者の署名に置き換えることはできません。印字した氏名だけでは署名を満たさない点にも注意します。
| 支援・提出方法 | 別紙2の確認 |
|---|---|
| 全部委託あり+電子届出 | 委託先が1機関でも必要。全部委託先の署名を受けたデータを添付 |
| 複数の登録支援機関に全部委託+紙で提出 | 別紙2が必要。本体の登録支援機関作成者欄は「別紙のとおり」 |
| 1つの登録支援機関に全部委託+紙で提出 | 本体の登録支援機関署名欄で対応する場合、別紙2は不要 |
別紙2は、対象年度・所属機関の情報・署名欄に加え、登録支援機関の名称、登録番号、署名・確認年月日を確認します。複数機関の署名を1枚にまとめることが難しい場合は、複数枚での提出も可能です。自社支援のみの場合も含め、自社に必要な書類は提出資料一覧表で照合してください。
6.添付書類と入力内容を照合して提出する
電子届出では本体を画面入力し、別紙等をデータで添付します。特定技能所属機関のアカウントを使用し、登録支援機関のアカウントで代わりに提出しないようにします。利用開始前には電子届出システムの公式案内で登録・利用申出を確認してください。
添付書類は、共通書類に加え、所属機関が一定の基準を満たすかどうかで変わります。電子届出というだけで全書類を省略できるわけではありません。提出資料一覧表の該当区分を使って準備します。
- 対象人数に年度途中の退職者が含まれ、1号・2号の重複がない
- 月平均の分母となる在籍月数と、算定対象の給与を照合した
- 本体の月平均と別紙1の年間合計を分けた
- 賞与の人数、昇給率の対象者と端数処理を確認した
- 全事業所・旧新の委託先の支援情報を集めた
- 署名、別紙2、現金払い等の報酬支払証明書を確認した
- 必要な添付書類がそろい、提出後の控えと受付結果を保存できる
書き方でよくある質問
給与の手取り額を書けばよいですか?
いいえ。本体の「きまって支給する現金給与額」と、別紙1の「報酬の支給総額」は控除前の額です。本体の控除額は別の欄で記入します。
退職者の随時届出を済ませていれば除外できますか?
除外できるとは限りません。対象年度に受入れ期間があれば、退職者も定期届出の対象です。人数の判定と、平均計算に含める月の判定を分けて確認してください。
電子届出後に間違いを見つけたらどうしますか?
令和8年5月の公式Q&A・Q16では、管轄の地方出入国在留管理局へ、理由書と補正した届出書等を紙で提出する方法が示されています。紙で提出した届出の補正も、提出先へ問い合わせて対応します。重複して新規届出をする前に、最新の補正方法を確認しましょう。
日付をまたぐ夜勤の活動日数、給与の支払月、別紙2が必要になる場合や提出後の修正については、特定技能の定期届出Q&Aまとめ|給与・活動日数・署名など28問もご覧ください。
集計や記入に迷ったときはご相談ください
日常の記録がそろい、対象者と集計方法が明確なら、自社で準備を進められます。途中入退社や2号への移行、複数の委託先、給与と勤怠の集計差がある場合は、元資料と計算過程を整理して相談すると、確認すべき点が明確になります。
たかやま行政書士事務所では、特定技能の手続や各種届出のご相談を承っています。対象年度、受入れ人数、支援の委託状況と、記入に迷っている欄をお知らせください。
提出時期や必要書類を一通り確認したい方は、特定技能1号の定期報告の概要と企業の準備へお進みください。この記事は一般的な記入方法の説明です。実際の提出時には、最新様式・作成要領と自社の状況を照合してください。
