外国人雇用で生成AIを使う際の7つの注意点|AI事業者ガイドライン第1.2版を踏まえて

外国人の採用や受入れ準備では、求人文の翻訳、社内案内の作成、必要書類の整理など、生成AIを活用できそうな場面が増えています。

一方、在留資格に関する情報は、多くの個人情報を含みます。具体的には、本人の氏名、国籍、生年月日、職歴、学歴、旅券や在留カードに関する情報などです。また、生成AIの回答はもっともらしく見える場合があります。しかし、制度の最新情報や個別事情を正確に反映しているとは限りません。

結論として、生成AIは「文章のたたき台」や「確認項目の整理」には便利ですが、個人情報を安易に入力せず、在留資格や採否に関する最終判断を任せないことが重要です。

2026年3月31日、経済産業省はAI事業者ガイドライン第1.2版を公表しました。本記事では、その考え方を外国人雇用と在留手続の実務に置き換えて、企業が確認したい7つのポイントを解説します。

目次

1.氏名や在留カード情報をそのまま入力しない

まず、生成AIへ入力した情報の扱いを確認しましょう。保存・利用の方法は、サービスや契約プラン、設定によって異なります。無料版・有料版という区分だけで、安全性を判断しないでください。利用規約やプライバシーポリシー、保存期間、学習利用の有無、管理者設定を確認しましょう。

生成AIを利用する際に個人情報を保護する外国人雇用担当者
生成AIを利用する前に、入力情報とサービスの設定を確認しましょう。

特に、次のような情報を本人が分かる状態のまま入力することは避けるべきです。

  • 氏名、生年月日、住所、電話番号、メールアドレス
  • 国籍、在留資格、在留期間満了日
  • 旅券番号、在留カード番号、申請受付番号
  • 学歴、職歴、給与、家族関係
  • 申請書、雇用契約書、履歴書などの原本画像

文章の整理にAIを使う場合は、個人を特定できない仮名や一般化した条件に置き換え、必要最小限の情報だけを扱う方法が考えられます。

個人情報保護委員会も、生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表しています。会社として利用ルールを決める際は、同委員会の最新情報も確認してください。

2.AIの回答だけで在留資格を判断しない

在留資格の該当性は、複数の情報から検討します。たとえば、職務内容、本人の学歴・職歴、雇用条件、会社の事業内容などです。同じ職種名でも、実際の業務内容によって判断が異なる場合があります。

生成AIは、存在しない要件や古い手続を、正しい情報のように回答することがあります。そのため、「この人は技術・人文知識・国際業務を取得できますか」といった個別判断をAIの回答だけで確定するのは適切ではありません。

AIで論点を整理した後は、出入国在留管理庁の最新情報と実際の資料を確認し、必要に応じて専門家へ相談してください。当事務所の就労ビザに関する案内もあわせてご覧いただけます。

3.申請書や理由書をAIの出力のまま提出しない

生成AIが作った文章には、事実と異なる内容が含まれることがあります。また、過度に有利な表現や、会社の実態に合わない説明にも注意が必要です。翻訳でも、職務内容や専門用語の意味が変わる可能性があります。

在留申請で提出する文章は、少なくとも次の点を原資料と照合しましょう。

  1. 本人の学歴・職歴と一致しているか
  2. 雇用契約書の職務内容・報酬・勤務場所と一致しているか
  3. 会社案内や登記事項、決算資料等と矛盾していないか
  4. 最新の制度・提出書類に基づいているか
  5. 実際には行わない業務や架空の事情が追加されていないか

最終的には、申請人と受入れ企業が内容を理解し、事実に基づいていることを確認する必要があります。

4.採用の合否をAIだけに決めさせない

外国人採用でAIを利用するときは、偏りに注意が必要です。学習データや入力方法の偏りが、国籍、言語、年齢などに関する不公平な評価につながるおそれがあります。

生成AIの回答を複数の担当者が確認して最終判断する様子
AIの出力は参考情報とし、採用や在留手続の判断は人が確認することが重要です。

AI事業者ガイドライン第1.2版は、公平性への配慮と、人の判断を適切に介在させることを重視しています。履歴書の要約や候補者情報の整理にAIを利用する場合でも、採否は担当者が仕事内容に必要な能力と客観的な基準に基づいて判断しましょう。

また、AIを採用評価に利用するときは、応募者への説明、評価基準、異議や問い合わせへの対応方法も社内で整理しておくことが望まれます。

5.翻訳は本人が理解できる表現になっているか確認する

生成AIは多言語の文章作成に役立ちますが、在留資格、労働条件、更新、届出などの重要語句が不正確に翻訳されることがあります。

雇用契約や会社の重要なルールを翻訳するときは、次の点を確認してください。

  • 日本語原文と内容が一致しているか
  • 給与、労働時間、契約期間、業務内容などの数字が一致しているか
  • 「許可」「申請」「届出」「更新」などが混同されていないか
  • 本人が質問できる窓口があるか

機械翻訳を渡して終わりにせず、本人が内容を理解できたかを確認することが大切です。

6.会社として利用範囲と確認手順を決める

また、担当者ごとに判断が異なると、対応にばらつきが生じます。たとえば、個人情報を入力する人と、入力しない人が出てくる可能性があります。小規模な会社でも、簡単な生成AI利用ルールを作っておくと安全です。

最低限、次の項目を決めておきましょう。

確認項目ルールの例
利用目的翻訳の下書き、一般的な文章校正、確認項目の整理に限定する
入力禁止情報個人情報、機密情報、未公表の人事情報、原本書類
利用サービス会社が承認したサービス・アカウントに限定する
最終確認制度情報は公式サイト、個別情報は原資料と照合する
責任者外部送信や重要文書への利用は責任者が確認する
記録重要な判断では確認した資料と確認日を残す

経済産業省は第1.2版とともに、チェックリストやワークシートも公開しています。自社ルールを作る際の参考になります。

7.制度変更を前提に、公式情報を確認する

さらに、在留資格制度や必要書類、受付方法は変更されることがあります。AIが参照している情報の時点が分からない場合は、回答が現在も有効とは限りません。

申請準備では、回答日やウェブ記事の更新日だけでなく、出入国在留管理庁など所管官庁の最新ページを確認してください。過去に作成した社内マニュアルやAIの回答も、定期的に見直す必要があります。

留学生を採用する場合は、当事務所の留学から就労資格への変更に関する案内も参考にしてください。

まとめ:AIは補助ツールとして使い、最後は人が確認する

外国人雇用と在留手続の周辺で生成AIを使う場合は、便利さだけでなく、個人情報、正確性、公平性、説明責任を考える必要があります。

重要なポイントは次の3つです。

  • 個人情報や申請書類の原本を安易に入力しない
  • AIの回答だけで在留資格や採否を決めない
  • 公式情報と原資料を確認し、人が最終判断する

生成AIを適切な補助ツールとして使えば、翻訳の下書きや確認事項の整理など、業務の効率化に役立ちます。一方、個別の在留資格の該当性や申請内容は、本人と会社の状況を確認しなければ判断できません。

外国人の採用や在留資格申請についてお困りの場合は、たかやま行政書士事務所の事業内容をご確認のうえ、お問い合わせください。

特定技能、外国人の手続き、支援活動、登録支援機関、有料職業紹介などについては、たかやま行政書士事務所にご相談ください。

たかやま行政書士事務所

※本記事は2026年8月18日時点の一般的な情報です。個別案件の許可や結果を保証するものではありません。

よくある質問

ChatGPTなどに在留カードの画像を読み込ませてもよいですか?

在留カードには重要な個人情報が含まれます。サービスの保存・学習利用・管理設定を確認しないまま、実物画像を入力することは避けてください。情報整理が必要な場合も、個人を特定できない形に置き換え、必要最小限にすることが基本です。

AIが作った申請理由書をそのまま提出できますか?

そのまま提出することはおすすめできません。本人の経歴、契約内容、会社の実態、最新制度と一致するかを原資料で確認し、事実と異なる表現を修正する必要があります。

外国人採用の書類選考をAIに任せられますか?

情報整理の補助として利用できる場合はありますが、AIだけで合否を決めると、偏りや誤判定の問題が生じる可能性があります。評価基準を明確にし、人が最終判断する運用が重要です。

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