就業先を失ったミャンマー人材と鶏肉加工会社をつないだ事例|特定技能1号の採用から継続支援まで

外国人材の受入れでは、「在留資格の許可を得ること」と「安心して働き続けられる就業先を確保すること」の両方が欠かせません。

当事務所では、飲食料品製造業分野の特定技能1号として来日したものの、予定されていた就業先で働けない状況になったミャンマー人材について相談を受けました。34名が地方の滞在先で集団待機し、新たな就業先を探しているという内容でした。

そこで、以前から外国人雇用についてご案内していた鶏肉加工会社へ事情を説明し、本人の希望、会社の求人条件、担当する業務などを確認しました。その結果、34名のうち2名の採用が決まりました。現在も2名は同社で働き、当事務所は日常的なフォローや在留期間更新の手続などに携わっています。

本記事では、関係者が特定されないよう一部を一般化したうえで、この事例から見えてきた特定技能外国人の採用と継続支援のポイントを紹介します。

目次

来日後に就業先が定まらない事態

2名を含むミャンマー人材は、在留資格認定証明書交付申請などの手続を経て来日していました。しかし、当初予定されていた受入れの調整が整わず、来日後に実際に働く所属機関が定まらない状態になりました。

特定技能は、外国人本人の技能や日本語能力だけで成立する在留資格ではありません。本人と受入れ企業との間で適切な特定技能雇用契約が結ばれ、従事する業務、報酬、支援体制、受入れ企業の適格性などが要件に合っている必要があります。

そのため、別の企業で働くことになれば、求人と求職者をつなぐだけでは足りません。新たな雇用条件と業務内容を確認し、必要な在留手続や届出、支援体制を整える必要があります。

この事例では、多数の外国人が慣れない土地で、仕事を始められないまま待機していました。本人たちにとっては、収入、住居、今後の在留、家族への説明など、いくつもの不安が重なる状況です。採用先を探す際には、人数だけを見て一括で進めるのではなく、一人ひとりの希望や適性、企業側の受入れ可能人数を丁寧に確認することが重要でした。

鶏肉加工会社へ事情を説明

当事務所は以前、鶏肉加工を行う会社へ、特定技能外国人の受入れについてご案内していました。同社は人材確保を課題としていましたが、外国人を採用する以上、単なる人手の補充ではなく、現場で安全に働き、地域で生活できる体制づくりが必要です。

相談を受けた後、同社へ次のような点を説明しました。

  • 人材が来日後も就業先を探している経緯
  • 本人が特定技能1号での就労を希望していること
  • 鶏肉加工の現場で担当する具体的な作業
  • 雇用条件や勤務場所を改めて確認する必要があること
  • 採用後に必要となる在留手続と1号特定技能外国人支援
  • 住居、生活案内、相談対応などを含む受入れ準備

会社にも現場の人員配置や住居の準備があります。急いで結論を求めるのではなく、会社が実際に受け入れられる人数と、本人が希望する働き方を確認しながら話を進めました。

34名のうち2名の採用が決定

調整の結果、同社はミャンマー人2名を特定技能1号外国人として採用することになりました。

大勢が待機している状況で採用できたのは2名です。しかし、外国人雇用では、受入れ人数を増やすことだけが目的ではありません。企業が責任をもって雇用できる人数であること、本人が仕事内容や労働条件を理解していること、入社後の支援を継続できることが大切です。

採用前には、主に次の事項を整理します。

確認項目 主な内容
業務内容 飲食料品製造業分野の対象業務に該当するか、実際に担当する作業は何か
雇用条件 報酬、労働時間、休日、契約期間、勤務地などが適切か
本人の要件 技能試験・日本語試験または技能実習からの移行要件などを満たすか
受入れ体制 指導担当者、安全衛生、生活上の相談窓口を確保できるか
支援計画 事前ガイダンス、住居、生活オリエンテーション、定期面談などを実施できるか
在留手続 新しい所属機関で働くために必要な申請・届出は何か

特定技能の申請では、書類上の会社名や職種だけでなく、実際の事業内容と本人が担当する仕事の整合性を確認する必要があります。鶏肉加工会社の場合も、製造工程、衛生管理、安全管理、付随業務の内容を具体的に整理することが重要です。

飲食料品製造業の特定技能で確認したいこと

飲食料品製造業分野の特定技能1号では、飲食料品の製造・加工と安全衛生の確保に関する業務が対象となります。肉加工を行う事業所も、対象となり得る事業所として農林水産省の案内に示されています。

ただし、「食品を扱う会社だから対象になる」と会社の業種名だけで判断することはできません。事業所で行われている製造・加工の内容や、外国人が実際に従事する主たる業務を確認します。

受入れ企業は、飲食料品製造業分野の基準や食品産業特定技能協議会に関する手続も確認する必要があります。制度や提出書類は改正されるため、申請時点の農林水産省と出入国在留管理庁の最新資料を確認してください。

採用はゴールではなく、継続支援の始まり

特定技能1号外国人の採用から支援と在留期間更新までの流れ
特定技能1号の受入れでは、採用から在留手続、生活支援、定期面談、更新まで継続的な管理が必要です。

2名の採用後も、当事務所は会社と本人の間に入りながらフォローを続けています。

特定技能1号の受入れ企業は、1号特定技能外国人支援計画を作成し、計画に基づいて支援を行わなければなりません。支援には、住居や生活に必要な契約の補助、生活オリエンテーション、日本語学習の機会に関する情報提供、相談・苦情への対応、定期面談などが含まれます。

食品工場では、仕事を覚えることに加えて、衛生ルール、安全上の注意、作業指示を理解できることも重要です。説明したつもりでも、本人が十分に理解できていない場合があります。やさしい日本語や本人が理解できる言語を使い、質問しやすい環境をつくることが、長く働いてもらうための土台になります。

定期的な面談では、勤務状況だけでなく、生活上の困りごとや会社へ直接伝えにくい悩みがないかも確認します。小さな行き違いの段階で対応できれば、問題が深刻になる前に会社と本人の双方が改善策を考えられます。

在留期間更新は早めの準備が重要

特定技能1号の在留期間には期限があるため、雇用を継続する場合は在留期間更新許可申請が必要です。

更新では、本人の在留状況だけでなく、雇用契約、報酬の支払い、受入れ企業の公的義務の履行、支援の実施状況、分野別の要件など、複数の事項を確認します。前回申請から、勤務場所、業務内容、報酬、支援委託先などに変更がある場合は、届出の要否も含めて整理が必要です。

期限直前に書類を集め始めると、不足資料や届出漏れに気付いても対応時間が限られます。当事務所では、在留期限を確認しながら会社へ必要資料をご案内し、本人の就労と生活が途切れないよう早めの準備を心がけています。

この事例から企業にお伝えしたい3つのこと

1.採用前に、実際の仕事と受入れ体制を確認する

外国人材がいるから採用する、求人があるから紹介する、というだけでは安定した雇用につながりません。現場の業務が在留資格の対象となるか、会社が何名まで責任をもって受け入れられるかを確認する必要があります。

2.関係者の役割を曖昧にしない

外国人本人、受入れ企業、職業紹介事業者、登録支援機関、在留手続を扱う専門家、海外の送出機関など、特定技能の採用には複数の関係者が関わる場合があります。

誰が採用条件を説明するのか、誰が在留手続を管理するのか、誰が入社後の支援を行うのかを明確にしておくことが大切です。なお、求人者と求職者の間の雇用成立をあっせんする職業紹介は、原則として許可・届出を受けた事業者が行う必要があります。

3.採用後も、支援と更新を一つの流れとして管理する

採用と在留申請が終わっても、外国人雇用は続きます。支援計画の実施、定期面談、各種届出、在留期間更新を一つの流れとして管理することで、会社も本人も安心して就労を継続しやすくなります。

よくある質問

鶏肉加工会社は特定技能1号外国人を採用できますか?

飲食料品製造業分野の対象となる事業所・業務に該当し、企業と外国人の双方が必要な要件を満たす場合は採用できます。ただし、会社の業種名だけでは判断できないため、事業所の産業分類と本人が担当する具体的な業務を確認する必要があります。

特定技能外国人は、別の会社へ転職できますか?

特定技能は一定の要件の下で転職が可能ですが、新しい会社との雇用契約や業務内容を確認し、必要な在留資格変更許可申請などを行う必要があります。新しい会社での就労を、必要な許可を得る前に始めないよう注意が必要です。

登録支援機関へ委託すれば、会社は何もしなくてもよいですか?

いいえ。支援の全部を登録支援機関へ委託する場合でも、雇用主としての労務管理や安全衛生、適正な報酬の支払いなどは受入れ企業の責任です。また、特定技能所属機関として必要な届出もあります。委託先との役割分担を明確にしておくことが大切です。

特定技能の採用・在留手続・支援を一体で考える

今回の事例では、就業先が定まらず待機していた34名のうち、2名と鶏肉加工会社との雇用が実現しました。これは、人数だけを合わせた結果ではなく、会社の業務と受入れ体制、本人の希望や要件、必要な在留手続を一つずつ確認した結果です。

現在も2名の就労は続いており、当事務所は会社と本人のフォロー、在留期間更新などに携わっています。外国人雇用では、採用時の手続だけでなく、安心して働き続けられる環境を整えることが大切です。

たかやま行政書士事務所では、在留資格、外国人の採用手続、特定技能1号の支援、登録支援機関、有料職業紹介、在留期間更新に関するご相談に対応しています。飲食料品製造業や食肉・鶏肉加工分野で外国人雇用をご検討の企業は、お問い合わせページからご相談ください。

公式情報

※本記事は2026年9月3日時点の公開情報と、当事務所が取り扱った事例に基づく一般的な解説です。関係者のプライバシーに配慮し、特定につながる情報や経緯の一部を一般化しています。個別の申請・届出の要否や結果は、本人と受入れ企業の状況によって異なります。

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